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  • 2010.06.17 Thursday
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せめて冒険者らしく。

 ***

 最近めっきり寒くなってきましたね。こんにちは、僕です。
今週の日曜、花鳥風月ステップ4に行くらしく、とっても楽しみにしております。

やれーケルベロスだー、やれーキマイラだー と、BさんだのMさんだのが脅かすんですが。
なんかそういうやり取りが楽しくって楽しくって仕方ないヴァレリアさんなのでした。

サーラメーヤには一度負けているので、今度はぶちのめして八竜なんちゃらとかを剥ぎ取ってこようかと思っております。
装備ジョブがないヴァレリアさん的には、あんまりどうでもいいのですがw

それはそれとして、そんな花鳥風月活動に勤しむ僕達を小説っぽく、ぬるっぽく書いてみました。
いつもの僕らを僕ららしく、結構頑張って書いてみたので、「紳士っぽく書きましたよね?」とかいわれましても、わかりません;;

ジョブとかは花鳥風月のときによく見かけているジョブにしてあります。
皆の暇つぶしにでもなればいいかなぁとw

ちなみに冒険者としてのヴァレリアさんということで書いていますので、これまでのよーなスカーレットフェザーの連中は一切でてこないのであしからず




 ***

 その国は、美しい森と海に囲まれた場所にあった。
ミンダルシア大陸からググリュー海を挟んだ遥か東。
エラジア大陸を版図とする国家、アトルガン。

西端はググリュー洋を望み、東端は極東諸国と境を接する広大な領土を有し、街は多数の城壁に囲まれていた。
高くそびえる石壁の周りには鬱蒼と茂るワジャーム樹林。その樹海を天然の城壁とし、外敵に対し無防備となる街道には楼閣や石櫓といった迎撃施設を設置して万全を期す。

 すべては周囲を徘徊するモンスターと蛮族達の脅威に対処するために作られた施設だ。この地の恵みを生かしながら生活するため、外の危険を防ぐ境界線。中に作られた街で、人々が安全に繁栄するために、これだけの備えが必要なのだろう。

このアトルガン皇国には敵が多い。ゼオルム火山にはトロール傭兵団。ワジャーム樹林を挟めばマムージャ族の蕃都も存在し、それぞれと交戦状態にある。
それでも魔笛に守られたこの国は他に類を見ないほどの繁栄を遂げていた。
 
 樹海のもたらす恵みと、多くの商人達が行き交う中で、人や物が集まった。通商国家として繁栄の極みにあったタブナジア公国との交流があったことも関係しているだろう。そうして、街は大きくなっていった。街が大きくなれば冒険を生業とする者達もここに腰を据えるものが増えていく。

ある者は傭兵として。ある者は一旗上げるため。ある者は出会いを求めて。ある者は仕事を探して。

冒険者が増えると、街は多大な経済流通を生み、モンスターの被害も減る。そうしてアトルガン皇国の街は他に類を見ないほどに賑わいを見せていた。それはかつて、ジュノ大公国がそうであったように。

 その中心となる街の名は、アトルガン白門。

 聖皇ナシュメラの治めるこの美しい街には豊富な石材を使い、いくつもの建物が林立している。しかもただ建てられているだけではなく、表面を滑らかに加工したり、屋根に文様を描いたりとさまざまな意匠が凝らされていた。

 朝は夜が明けきる前から人の姿が現れ、日が昇ると共に街の住人、物売り、職人、街を走り回る商人などの姿が増えていった。田舎から出てきたばかりの者は、この世の何処にこれだけの人がいたのかと驚くほどの繁栄ぶりである。

 日が暮れても遅くまで中央通りや街角から人の姿はなくならず、街が静まる時間は殆どない。艶っぽい娼婦達やよっぱらいの喧騒が止むことはないからだ。まさにアトルガン白門は、眠らない街と化していた。

 なかでも蛇王広場から西に少々いったところにあるバルラーン通りの露店街の賑わいは他から抜き出ていた。白門ストリートのなかでも指折りの広さをもつバルラーン通りには、ガルカが横一列に何人も座れるほどの長椅子を備えた露店商店街も数多い。これほどの露店が集まっているのは元々アトルガン地方には雨が少ない事もあるかもしれない。

 大人数が同席できるテーブルがいくつも置かれ、これを埋める客が入れ替わり立ち替わりやってくる。壁際には大きな酒樽が山と詰まれ、大酒飲みのガルカ傭兵や美酒を好むエルヴァーン騎兵達の胃を毎晩で満たしてくれていた。

 露店酒場の客の多くは冒険者だ。バルラーン通りにはさまざまな目的で仲間を募る冒険者たちがおり、傭兵や仲間を見つけては冒険に出かけていく。特に傭兵キャラバンで中の国からやってきた冒険者たちの多くは、同じアトルガン白門街にある傭兵企業サラヒム・センチネルで契約を交わしている。多人数で冒険に出かける場合、仲間の準備が整うまで時間がかかる場合があり、そんな時にはここで飲食しながら仲間がくるのを待っている。

 冒険を終えた者も成功して暖まった懐の中身を使い、自分を労う為に酒を飲む。失敗した者とて寒い懐からどうにかギルを搾り出し、自分を慰めるために安酒を飲む。
もちろん冒険者たち以外の立ち入りが禁じられているわけでもない。日が落ち、夜の帳が訪れれば一日の仕事を終えた冒険にかかわりをもたない人々も加わり、バルラーン広場の露店酒場はさらに賑わう。狭い店内に所狭しと置かれたテーブルには空席は無く、日が暮れてそれなりに時間が立つというのに騒々しさと酒や焼けたシシケバブの脂の匂いが立ち込めていた。

 そんな中に彼らの姿もあった。
一人はミスラのナイト。かつて戦時下のサンドリア王国で愛用された緋色のサーコート、ラムホーバークに身を包み、ガラスのグラスを片手に上機嫌の様子で尻尾を揺らしていた。傍らにはクァール種のなめし皮製の鞘に収められた蒼い片手剣と鋼鉄の盾が大切そうに立てかけられている。
 もう一人はエルヴァーンの竜騎士。タブナジア騎士団の威風をそのまま形にしたような豪奢な鎧、バローネコラッツァを身に纏っている。ミスラのナイトより頭二つ分くらい高い彼女の隣には、蒼く美しい槍が立てかけられていた。
 普段なら兜の下に隠れているであろう素顔は優美なエルヴァーン女性に違わず、整った顔立ちに穏やかな微笑を浮かべている。

「かんぱ〜い!」

 ガラスのグラスを音を立てて合わせ、祝杯を挙げる。重なったグラスの数は3つ。
二人の女冒険者の相手をしているのは長髪のヒュームの男性である。洒落た彫金細工の施されたコロネル、肩周りに霊獣の毛皮のファーをあしらったモリガンローブをふんわりと着こなし、同じく霊獣の素材を惜しげもなく使ったズボンには旅の邪魔にならない程度の装飾品があしらわれていた。洒落た格好がその青年にはとてもよく似合っていた。
軽く斜にかまえて、青年は女冒険者達の乾杯に応じている。雰囲気は明るい。3人は高揚した顔で盛んに笑いあっている。そのテーブルに一人の巨漢が近づいていった。

「あらぁ、ヴァレリア、エステル、それにバリズも。珍しい組み合わせじゃなぁい?」

 名を呼ばれた3人が顔を上げる。視線の先に立つ巨漢は3人ともが知っている顔であった。
まず目に付くのがガルカ族特有の隆々とした筋肉。ガルカ族は元々大柄な種族であるが、彼はその中でも一層巨漢であった。そしてその逞しい体に身に纏うのはアレスプレートアーマー。戦士や暗黒騎士達の羨望を集める非常に強力な防具である。それを身に着けているだけでも、彼が一流の冒険者である事が伺えた。

「姫さま、こんばんは。」

「こんばんはぁ。」

彼の名前は、本当はダイハードという。ガルカ名は知らない。ただ、彼はこのあたりでは有名人らしく、皆が彼のことを姫、と呼んでいた。もちろん、彼の間延びしたオネエ言葉がその原因であることは確かであろう。しかし、今も冒険者の何人かが彼に気づき、小さく黙礼を送ってくる。だから3人も他の冒険者に倣ってこう呼んでいるというわけだ。

「どうやら冒険がうまくいったようねぇ」

「あぁ、今回はゼオルム火山まで足を伸ばしてね。アカモートを倒してきたのさ。」

ヴァレリアは得意げに言った。
アカモートはゼオルム火山に生息するワモーラ族の亜種だ。とある老人の頼みで、3人はこのモンスターを討伐に出かけていたのである。

「まぁそこのナイト様は、目的地につくまで鎧が熱いだの硫黄くさいだの、散々ぶーたれてたんだけどね。」

胸を張るヴァレリアに、バリズがちくりと言った。急に水を向けられたヴァレリアが「なんですって!」と声を荒げた。その隣では、バリズの手にしたグラスが空くと、エステルがとくとくと酒を注ぎ足していく。

「あ、よかったら姫もどうぞ。」

ふわりと微笑みながらグラスに酒を注ぎ終えると、エステルは椅子を勧めた。

「あらぁ、じゃあ少しお邪魔しようかしら」

ダイハードはそう微笑んで、バリズの隣の席にどかりと腰を下ろした。

「おいおい、私の隣はチャーミングな女性限定と決まってるのだが。」

「あら、それなら何も問題ないじゃなぁい?」

ヴァレリアとエステルは苦笑を浮かべた。

「でもあのアカモートをねぇ。貴方達もやるわねぇ。姫ちょっと感動。」

「・・・ふふふ。でもね、ヴァレリアったら酷いんですよ。」

両手をくみ、キラキラと目を輝かせるダイハードに、少々意地の悪い顔を見せながらエステルが口を開く。バリズがそれにあわせて片目を閉じた。

「彼女はナイトだから、もっと最前線で盾として体を張ってほしいんですよ。でも、ヴァレリアは銃騎兵あがりだからとっても攻撃的で・・・。マスケット銃を盾に仕込んでたりするんです。」

 そういってエステルはテーブルの上に置いてあったヴァレリアの長銃をコツコツと突いた。彼女のマスケット銃は片手でも扱えるように銃身が短くなっている。ホルスターは盾の持ち手に邪魔にならないように備え付けてあった。

 しかし盾に銃と火薬を仕込んでいるのが曲者だった。盾で攻撃を受ければ、当然火薬が暴発することもありうる。

「バリズさんが魔法を唱えているとき、これが暴発しちゃって。火山だから元々銃の火薬が熱を持ってたんでしょうね。アカモートの攻撃を受けたときに・・・・ばーーーーんっ。 」

「まぁ!」

「私の会心のサンダー犬聾事にヴァレリアの尻尾に命中した。」

 ダイハードはとうとう口元を押さえて笑い出してしまう。ヴァレリアのほうを見ると、明後日のほうを向いて口笛などを吹き、必死に誤魔化そうとしていた。ちなみに口笛は音がならず、スースーと空気が抜ける音だけがむなしく響いている。それでいて、料理にだけはこっそりと手を伸ばそうとしていた。
 よそを向いているために皿の場所がわからないのだろう。伸ばした手が何度か空をつかむ。バリズとエステルはさりげなく皿をヴァレリアの手のほうに押しやりながら苦笑を浮かべた。

「まぁ・・・そんなところがヴァレリアらしかったりするんですけどね。」

エステルがそう言うと、ヴァレリアの表情がぱぁっと明るくなった。

「こんなのが傭兵騎士団長だっていうんだから、世の中わからないものだ。」

バリズのぼやきの聞こえるほうの耳はぱたりと閉じて、ヴァレリアはグラスを掲げた。

「もういっかい!もういっかい!」

苦笑しながら、ヴァレリアの掲げたグラスに3人は「はい、乾杯。」とグラスを合わせた。


***


 翌日、ヴァレリアはエステルを伴ってアトルガン白門の街を歩いていた。ヴァレリアもエステルも防具を脱いだ気楽な格好である。冒険が終わった次の日ということも手伝って、久々の解放感を味わっていた。今日は差し迫った用事は無い。

 街道警備や傭兵業務といった、主に駆け出しの冒険者達が行う仕事はもはや二人には回ってこないからだ。それに賞金の懸ったノートリアスモンスターであるアカモートの討伐は十分な見入りをもたらし、二人の懐を潤してくれた。だから今日はのんびりできるのだ。

「あぁ・・・自由って素晴らしい!」

 祖国に戻れば、貴族並の暮らしと立場を保障された騎士の口から出たとは思えない言葉を吐きながら、ヴァレリアは大きく伸びをした。昼下がり、頭上は晴天、気温は寒くも熱くも無く心地いい。
今日はこのまま帰って昼寝でもしてしまいたい気持ちにもなっていた。

「街の人たちはまだまだ額に汗をかいて仕事してるね。・・・それなのに私達は休みを満喫している。これはちょっとうしろめたい嬉しさだわ。」

隣を歩くエステルが髪をかきあげながらそういった。本心からの言葉なのだろう。
涼やかに流れる前髪の奥の瞳はうっすらと眠気を訴えていた。

よし、今日は一日だらけて過ごしてしまおうと、自分へのご褒美をかねてヴァレリアはそう決定した。

「と、その前に・・・」

 ヴァレリアは蛇王広場の噴水へと歩む足の先を向けた。蛇王広場の真ん中には豊富な水をたたえる噴水がある。そこには多くの人々が涼みを求めて集まっていた。
その先には見知った顔の男がいる。

「よぉ、久しぶりだな。」

 黒髪のヒュームの青年。顔には何が起きても動じないのではないかという微笑を浮かべている。
切れ長の目、薄い唇、無駄の無い曲線を描く顎。腰にぶら下げた鮮やかな彩色の鞘に収められた両手刀。すべての部分が彼の歴戦の経歴と性格を物語っていた。
青年は現れたヴァレリアとエステルに気づいて軽く手を挙げた。

「モーターワークスじゃないか、どうしたんだい。こんな早くから。」

それを聞いてモーターワークスと呼ばれた男は苦笑を浮かべた。

「もう、昼を過ぎてるよ」

いつの間にそこにいたのか。バリズが噴水の縁に腰掛けてそう指摘する。モーターワークスは腰に吊り下げた太刀の場所を直した。別に位置がずれたのではなく噴出しそうになった顔を隠したのだろう。

「どうせさっきまで寝てて、エステルさんに起こしに来てもらったってクチだろう。」

「あたり。」

「う、うう、うるさいな。朝は苦手なんだ。」

口元を押さえながらくすくすと笑うエステルと必死に笑いを堪えるモーターワークスに、ヴァレリアはぶっきらぼうに答えた。3人相手にからかわれると、とても勝ち目は無い。

 その格好をみればわかるように、モーターワークスは熟練の冒険者である。身に纏った薄金装束は東方職人達が丹精こめて作り上げた強力な防具だ。軽量かつ強靭で、振るう武器の邪魔にならない。練達した侍が身に着ければ修羅のごとき強さを発揮する。
経験も力量もヴァレリアから見ればずっと上の冒険者だ。ヴァレリアは軍人ではあっても、冒険者としてはそれほど経験をつんできている自覚はない。
それだけでも緊張するというのに、このモーターワークスはこちらを見透かすようなまなざしをしているのだ。冒険者としても、戦士としても適わないものを感じさせる青年だった。

「ところで、あたし達に何か用事ってきいたけどぉ?」

振り返ると、完全武装の姫さま、ことダイハードが立っていた。こちらはバリズとセットだったらしい。
密着しようとするダイハードにバリズは至極嫌そうな顔をして絡みつく彼の腕を振り払っていた。

「あぁ。ちょっとした依頼があってな。バリズと、君たちに。」

「いらい?」

 そう言いながらヴァレリアはバリズを見た。彼はいつも通りの人当たりのいい笑顔を浮かべて頷いた。くっつきたがるダイハードを払うときだけ苦い顔になりながら。

「言っていなかったっけ? ここのところの私達の仕事は皆モーターワークスからの仕事だったんだ。」

「まぁ俺は仲介だな。道楽ジジイの手伝いみたいなもんだ。」

「道楽ジジイ? あぁ・・・サンラクじいさんのことねぇ〜、姫、納得ぅ。」

 モーターワークスの軽い調子でいった言葉のあとに、ダイハードが続ける。アトルガン白門の道楽ジジイといえば一人しかいない。それなりの能力のある冒険者に、自分の趣味の花鳥風月とやらを吹っかけ、それを活写してもってこさせるという東方からやってきたご老体のことである。
ヴァレリアも何度か彼の仕事を請け負ったことがあった。

「次の場所はゼオルム火山。ヴァレリアが尻尾を焼かれたところだな。」

「ちょっと! 何で知ってるのさ!」

「ごめぇん、姫が話しちゃったのぉ〜」

地団太を踏むヴァレリアを囲んで一堂が声をあげて笑った。

「まぁそれはそれとして、危険なやつだ。早めに討伐して被害が出ないようにしたい。すぐに出られるか?」

「もちろん。・・・あ、いや、これから準備してからだな。移送の幻灯の仕様許可は?」

そういってバリズはダイハードを振り返った。

「それは抜かりないわよん。姫におまかせ!」

物騒な大斧とゴツい鎧を着込んでるくせに、とても可愛らしいデザインのサッチェルから羊皮紙の束を取り出す。それは移送の幻灯の仕様許可証だった。

「じゃあ、詳しいことは後でだな。ヴァレリアとエステルさんは・・・行楽気分だから・・・とりあえずモグハウスだな。そこで準備を済まそう。」

モーターワークスは両手刀の柄をコツコツとたたくと、涼しげにそういうのだった。
帰りに茶屋シャラトトに寄り、おいしいシュトラッチとチャイの葉などを買って、港の日当たりのよい場所でも探して昼寝するつもりだったヴァレリアとエステルは小さなため息をついて頷いた。


***


 5人連れ立って、蛇王広場からバルラーン通りを進んだ。
アトルガン白門はこの国でもっとも活気のある区画である。皇民街へと続く凱旋門と戦闘街とも呼ばれるアルザビとの間に築かれた街。蛮族達が攻め入ってくる厳しい状況下において、人々が作った安住の場所だった。高くそびえ立つ鐘楼と厚い城門、そして数々の迎撃施設が人々が安心して暮らせる場所を作り出している。安全な場所であると共に、周辺の交通の要所でもあった。自然と人や物が流れ込み、冒険者達の住まいであるモグハウスもそこにある。そこはかとなく嫌そうな顔をしているヴァレリアをエステルがずるずると引きずって行く。その様をバリズ達はにやにやしながらも何もいわずに見守っていた。準備を終えた二人が出てくるのにそれほど時間はかからなかった。

「早かったな。」

「私は別に準備が遅いわけじゃないよ!」

「単に面倒くさいだけよねぇ。わかるわぁ、休みだと思ってた日の労働はしんどいものねぇ」

 両手を組んでうるうるとし始めたダイハードにヴァレリアは苦笑した。そっとバリズとモーターワークスはダイハードから距離をとる。絡みつく相手が見つからなかったダイハードは結局、同じくらいの身長だったエステルの手を取ってニコニコと微笑んだ。

 石造りの白亜の建物が立ち並び、地面は石畳で覆われている。近くで良質な石材が採掘できることも関係しているのだろうが、街の隅々まで整備が行き届いていた。バルラーン通りは人々の流れの拠点ともなっており、露店酒場や店屋、競売所などの市民性の高い施設が集まっている。
 昼を過ぎ、街はもっとも人通りが多い時間帯に差し掛かっていた。田舎から出てきたばかりの冒険者はこの賑わいを見て「何かお祭りでも開かれているんですか?」と聞くらしい。それほどの賑わいがこの通りでは日常の出来事だった。道中、ガマ口財布をいそいそと取り出したダイハードが露店でシシケバブをダース買いして「るんるん♪」とステップを踏んだ。どうやらこれから向かう先で必要になるらしい。

 そんな賑わいの中、モーターワークスが一軒の露店酒場を指差す。一同は頷きあって暖簾をくぐる。その店は、いつもこのメンバーがパーティーやアライアンスを組んで冒険に出かけるときには必ず待ち合わせをする店だったからだ。

「にょ? 皆来た〜。ジョニー、皆きたよ〜。おーい、こっち、こっちー!」

「コトっぴー、おいすー」

 露店酒場は厨房のあるカウンターで内と外に区切られ、厨房の中では何人かの料理人とバーテンダーが忙しそうに働いていた。カウンターの外には大き目の長机がいくつも並び、狭いながらもその間を縫う様にして客は自分たちのお気に入りの席を見つける。そのうちの一つに腰掛けたタルタルが大きく手を振った。傍らでマトンのローストにかじりついていたヒュームの女性にダイハードがシシケバブの入った袋を掲げてみせる。

「もー。おーーーそーーーいーーー。」

そう不満そうに言った後、手についた脂を舐めとりながら、ジョニーと呼ばれたヒューム女は笑った。近東装束のターバンに洒落た羽飾りをつけ、大胆に素肌を見せたシャイルゴムレフに身を包んだジョニーは嬉しそうにダイハードの差し出したシシケバブを受け取る。

「ジョニーには肉を渡しておけばいい。」

「んふ、おいしい。コトカも食べる?」

「さっきマトンのロースト食べてたじゃない!」

 コトカはふんわりとした栗色の髪を後ろで二つに縛った愛らしい髪型をしていた。エラント装束という魔法使い達が好んで身にまとう旅装だ。ところどころに身に着けた宝石の宝飾品が、コトカがぴょこぴょこ跳ねるたびにキラキラと輝く。ジョニーは吟遊詩人、コトカは赤魔導師だった。どちらも姉妹のようにいつも一緒にいる。仲がいいらしい。
 隣に腰を下ろしたダイハードの横にとてとてと近寄ってそのひざの上にちょこんと座った。

「ジョニーとコトっぴが来るってことは、今回の獲物は大物かな?」

 ダイハードがそそくさと皆に配膳し始めたのを見計らってヴァレリアは口を開いた。隣に座ったバリズは涼しい顔をしている。そんな時は大体、厄介げな仕事のときが多い。ヴァレリアは小さくため息をついた。

「まぁ私が歌えばケルベロスだっていちころです。」

 猛烈な速さでシシケバブを頬張るジョニーに一同は苦笑した。実際、彼女が爪弾く弦と管楽器の音色はどんな状況でさえ、「まぁどうにかなるんじゃないか」 と思わせてくれる。あれだけ肉を食べてどうして素肌を強調するようなデザインのシャイルゴムレフを身に纏えるほどにスタイルがいいのか疑問である。自分の胸を押さえながら、エステルはジョニーの食欲に小さく舌を打った。

「さて。皆の集、準備も終わったところでそろそろ打ち合わせといくか?」

それまで様子を見守っていたモーターワークスが手を叩いてそう言った。

***


「サーラメーヤ?」

 相変わらず肉にかじりついているジョニーをよそに、モーターワークスに標的の名前を聞いたヴァレリアは実に不思議そうにその名を繰り返した。

「そうだ。聞いたことは無いか?」

「知るわけないじゃない、化粧品かなにか?」

首をかしげてヴァレリアはモーターワークスをみつめる。彼は苦笑していた。

「いくらヴァレリアでも知ってるほうに私は賭けてたんですけど。バリズさんの勝ちですね・・・。」

 とても悲しそうな顔をして、エステルはアトルガン白銀貨を一枚、バリズに渡した。「毎度あり。」と小さくつぶやいて涼しそうな顔でバリズは白銀貨を懐にしまいこむ。

 席は聞かれてまずい話ではないものの、目立たないほうがいいだろうということで酒場の端のほうの席に陣取っていた。昼下がり、この時間帯であればさすがのバルラーン通り露店酒場といえどすいているので、場所取りに苦労はしなかった。

「ケルベロス族だよ。最近火山に現れたらしい。」

モーターワークスに変わってバリズが口を開く。昨日のサンダー誤爆事件を思い浮かべたのだろう、彼はヴァレリアの少しこげた尻尾を指差した。

「凶悪なやつらしい、皇国軍でも手を焼いているそうだ。奴が本格的に暴れまわる前に討伐しなければならん。」

そういってモーターワークスはグラスの中身をあおった。すかさずエステルが酒瓶をとって注ごうとしたが彼は指で静止して断った。

「ケルベロス族ってだけで結構大仕事ねぇ〜。他に何か特徴とかはないのぉ?」

「いくつかあるが、いずれも噂話を出ないものばかりだ。確定情報はない。」

「じゃあ基本的にはいつも通りの、行き当たりばったり なのね。」

「そういうこと。俺達らしいだろ?」

 お互いに経験をつんだ冒険者であるため、打ち合わせは最小限でいい。以前のアカモート狩りからまだ日は殆ど立っていない。体が即戦状態にあるうちに体を動かしておきたい。その割には少々刺激的すぎるかもしれないが、なにより皆で冒険ができるということにヴァレリアは心を躍らせた。

「そういえば、今回はシムさんはこないの?」

話がまとまり始めたとき、コトカが何気ない調子で聞いた。シムというのはガルカのモンクのことである。歌いながら怒涛の烈拳を炸裂させることから、「戦うジュークボックス」などと恐れられている。

「あぁ・・・あいつか。ジュノで迷子の女の子を保護したら幼女誘拐犯に間違えられたらしい。それがショックでグロウベルグ山に篭ってる。」

「それは・・・なんとも。」

笑いを堪えながら、コトカはそう答えた。
一通りの打ち合わせを終えた一同は、久しぶりの大仕事を前に軽口や冗談を叩きあいながら席を立つ。


「さーて、それじゃあいくよー! ジョニー団出発だー!」

 手にシシケバブの串を握り締め、ジョニーが先頭を歩き始めた。目指す先は移送の幻灯。
灼熱が支配するゼオルム火山へはこの魔法の門をくぐれば瞬く間に到着する。


***







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  • 2010.06.17 Thursday
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  • 13:29
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コメント
相変わらずバカやってるかね。
どこかに良い火種はないものかねぇ。

やぃ、こら。

来週、フロントミッション3の舞台となった南国へ出向くぞ。
なんなら「そーきそば」の3杯くらい、奢ってもらってもしいぞ。

  • 燕の4番
  • 2009/11/02 2:25 AM
そーきそば>ジャンにおごってもらうといいよ!

中の人は家庭版のぬるーいネトゲしか出来ないのだけど、君PCがいいって言ってなかったっけ・・・。
EVOLVEまで伏して待とうジャナイカ!

君のPOLのフレリストはもう使えないのだっけ?
連絡の取り様がなっすぃいいいん!ボスケテえらい人!
  • べる
  • 2009/11/02 3:41 AM
Barizさんはともかく俺が忠実に渋く再現されてるのでいいです!
次回は刑務所のSimさんのプリズンブレイクが始まるんですね!
  • Motorworks
  • 2009/11/08 5:56 PM
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