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  • 2010.06.17 Thursday
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赤魔道士クランの大冒険 その1

 
***

冒険者。

それはなにかの目的で、それが名誉、利益のために、あるいはなんらそれがもたらすものがなくても、「冒険」というそれ自体のために危険な企て、冒険、試みに敢えて挑戦を試みる人たち、あるいはかかる事件、事態に目撃者として遭遇した人たちも含めて指す。

コンクエスト政策に従事する者、未踏査の秘境を散策する者、遺跡の発掘に傾倒する者。
果ては未発見の鉱脈、資源を求め、国の援助を得て世界を又に駆ける者たちもこの冒険者たちである。

時代は、冒険者の時代。

老いたる獅子の国と揶揄される城塞王国、サンドリア。
しかし王都を守る王国騎士団は白兵戦ならばアルタナ四国最強と謳われるほどに強く、勇壮であった。
街を行く女たちは美しく、気品に満ち溢れている。
一目にはこの国が最も国力に陰りを見せている国だとはわからないだろう。

しかしながら市民街に目を移せば、空き家が目立ち、単一種族とまで言われるほどに大多数を占めるエルヴァーン人たちの街は細々としたものであった。

その市民街から北サンドリアの方へ行くと、サンドリアの二大騎士団を支える冒険者や傭兵騎士団たちの宿舎、在郷騎士たちの住まいが並ぶ。
市民街とは対照的に、こちらは騎士たちの訓練で熱気に満ちていた。

剣撃の音、轟く角笛、隊列を組みなおす兵士たちの軍靴の音。それは勇壮で、それでいて整然と王国の息吹となっている。老いたる獅子の国と揶揄されながらも、それでも尚と王国を守る為の盾とならんとする若い獅子たちの息遣いであった。

緋色の下地に金の縁取り、銃と剣の交差した紋章の描かれた垂布のたなびく宿舎。

古めかしい佇まいの中に、木造ならではのしっかりとした質実と剛健さを感じさせるサンドリアの居住区の一角にそれはあった。
ひときわ大きいチョコボ厩舎。その隣にはよく手入れされた敷き草の上に幾つもの射撃訓練用の的が立てられた訓練場がある。
宿舎の周りには夏には食用に適する柑橘種の実のなる樹木がぐるりと囲んでいた。その合間から誰かがチョコボで突っ込んだのだろう、見るも無残に破壊された、鑑賞用植物の棚が見える。

修繕中の馬上槍が軒先に立てかけてあり、その奥にホワイトオーク製の重厚な扉がそびえていた。
扉はこの手の屋敷にしては珍しく目立つ彩色は施されておらず、隣には小柄なタルタルが出入りできるように、小さな扉も備え付けてある。
玄関の隣には出入りしているタルタル族が書いたのであろう、エルヴァーンからみると膝の辺りに位置する高さに、「部隊こそ我が祖国。」とぼんやりと淡く光る文字が描かれていた。

サンドリア王国軍傭兵騎士団騎鳥銃騎士団、スカーレットフェザー。
王国軍において数少ない、銃を正式に実戦運用しチョコボを駆って戦う、異端の騎士たち。
それがこの屋敷に住まう者たちだった。

その宿舎の玄関に。

一人のヒュームの男が背筋を伸ばして立っている。
真一文字に口を結んで。

背丈はヒュームの男性にしては少々高い。しかし彼は異常なまでにひょろりとした体つきだった。
案山子が上等な服を着て立っている。そんな感じだった。

脇にサンドリア王国魔法アカデミーの紋章が入った鞄を抱えている。
それは彼は神聖魔法の最高権威ともいえるサンドリア国教会附属の王立魔法アカデミーを首席で卒業した証だった。
白魔道士、赤魔道士を多く輩出する王国魔法アカデミーの学生だった彼は、当然のように赤魔道士としての道を修めてきた。
だがそれは魔法を極める為でも、魔法剣を操る術を身に着けるためでもなかった。

ただ、「誇り高きサンドリアの騎士」になりたかった。

王国騎士団は駄目だった。自分はエルヴァーン族ではない。ただ、それだけであったが、屈強で頑健な体を持っていないヒューム族の自分には、王国騎士団の入団試験をパスする見込みはなかった。
ならば、と神殿騎士を志したが、それも駄目だった。
神殿騎士団は何よりも伝統を重んじる。亡命サンドリア人の両親を持つ自分の生まれを呪いもした。

剣を振るう力はない。誇り高き血も流れていない。
ただの、平民。

そんな彼が、今こうして、外国人傭兵にして、サンドリアの禄を食むサンドリアの傭兵騎士団の門の前に立っている。ここならば、彼は「サンドリアの騎士」になれるのだから。
だが、問題はそのやたらに威圧的な門の存在だった。

別に豪奢な彩色がされているわけではないし、門前払いを食わされそうな雰囲気でもない。
ただ、その玄関があまりにも実戦志向に基づく設計な事が彼をひるませた。
一度王の命令が下れば、この宿舎に住まう全ての騎士が、誰も彼も戦場へと駆けてゆくだろう。誰も彼もが、喜んでその命を投げ出すだろう。

ものいわぬ門の、その存在が彼にそこまでの覚悟があるかを問いかけているように思えた。

「あなた・・・・誰・・・?」

「はひぇ?!」

気がつくと彼の膝ぐらいの位置から彼を見上げる者がいた。
だぶだぶの白い法衣を身にまとい、可愛らしい小さな杖をついたタルタルの女性。ふんわりとした髪をフードが覆っている。そのフードの奥から、じーっと彼を見上げていた。

「あ、あの! 自分の名前はクラン・オースティン、入団を希望したいんですが!」

思わず飛びのいたあと、クランは半ば半泣きになりながら叫んだ。そのあとに光速で頭を下げる。
彼は強く目をつぶって、彼女の何がしかの反応を期待していた
しかし、いつまでたっても彼女は何も言わないし、何のアクションも返してこない。
恐る恐る目を開けて、彼女の方をみると、

「・・・・すぅ。」

なんとも可愛らしい寝息をたて、タルタルの少女は立ったまま、ゆらゆらと体を揺らして眠っていた。
あまりに予想外の反応に、クランは固まざるをえなかった。
まるで風に揺れる夏花にゆれるように、ふわりゆらりと、立ったまま、寝息を立てるタルタル女性に、クランはどうすることもできなかった。

「あ・・・・・あのぅ・・・?」

このまま、彼女の睡眠欲が満足するまで待つわけにもいかない。クランはかがみこみ、そっとタルタル少女をゆすった。
その拍子にフードがはらりと取れる。絹糸のように細く、金色の毛先が亜麻色に変わる不思議な髪を後ろに束ねたポニーテールがふんわりと彼の前で風に揺れた。

「おい、小僧。ヤチル殿に何をしている?」

ドスの聞いた声が背後から聞こえた。
なんともいやな予感がした。

猛烈な怒気が自分に向けられている。
剣だか、槍だか、そういうのが自分に向けて振り上げられている気がする。
そして、それはどちらでもなかった。

「小僧、私は性犯罪者には少々厳しいぞ。」

振り返った瞬間、マスケット銃の銃床を振り上げたエルヴァーンの男がそれを振り下ろした。
光る液体を飛ばし、クランが地面の感触と土の味を覚えたのは、3回ほど空中を回ってからのことだった。

「ヤチルル殿、何か痛いところは? 大丈夫ですかな? 街は危険だとヒューレン老にいわれてたではありませんか。」

ヤチルルと呼ばれたタルタル女性の駆け寄ったエルヴァーンの男が、慌てて銃を担ぎなおし、ヤチルルのフードをかぶせなおす。小さなあくびをして目をこすりながら、実に緩慢な動作でフードをぽんぽんと整えながら、ヤチルルは地面に転がったクランを指差す。


「・・・入団・・・希望者・・・。」

誤解だ、誤解です と何かうわごとのようにつぶやくクランを見下ろしながら、男はぽーんと手を叩いた。路傍に転がる石ころを見るような目で見下ろしながら、男は地面に倒れたままのクランの襟首をひっつかみ、大またで玄関の扉をくぐった。

とことこと後をついてきたヤチルルが指をちょいちょいと振ると、大きな扉が手も触れていないのに閉まる。ずるずると引きずられていくクランを見て、ヤチルルはフードの奥の瞳を薄く閉じた。

「・・・物好き」

そうポソリとつぶやくと、ヤチルルはまた小さなあくびをして、とことこと宿舎のホールを歩いていった。

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  • 2010.06.17 Thursday
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  • 22:02
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コメント
大変おひさしゅうございます。
もう何年も前になりやすが一緒に戦場を駆けた日々が懐かしいッス。
前線につっこんでは迷惑かけてた「犬」です。
リオンさんとこで見たんですがフロントミッソンの新作があるそうで、
また会ったときにはよろしくどうぞ

もちろんUSNで。
  • hounddog
  • 2009/08/31 11:10 AM
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