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  • 2010.06.17 Thursday
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ずの攻防戦VI

 

***


「この勢いなら敵本陣、フォーローン・バンガードまで突破できそうですな。」

白狼のサリッサ部隊をハーディンが連れて行った為、スカーレットフェザーの本隊、つまりヴァレリアの親衛部隊に合流していたサイフォスが興奮冷めやらぬといった調子で声を掛けてきた。
身にまとった龍鱗のスケイルメイルにはべっとりと返り血がついている。
手持ちの槍を長大なサリッサ槍に持ち替えた白狼隊の突撃力は格段の威力を誇っていた。

すでに3度もの敵の防衛線を打ち砕いてきたスカーレットフェザーである。
その士気はもはや最頂点にあり、ヴァレリア隊の後ろには連合軍の兵士達が幾人も付き従い、従軍救護兵までもが戦槌を手にスカーレットフェザーの旗の下に集っていた。

「まぁ、それ以前に包囲されつつあるんだがね。」

竜剣リディルを携え、白鎧を伊達風に身にまとったヴェルがいう。
ヴェルが率いるエルヴァーン女性だけで構成された白千鳥騎士隊はまさに異様でもあった。
隊長のヴェルとその親衛従騎士の副隊長2名を他の部隊員が全力でサポートするという戦法で前線の穴を埋めて回っているのだ。

「ヴァレリア様、そろそろ連合軍の兵士達が疲弊しています。士気は僥倖ですが、このままではいずれ・・・」

ヴェルの発言を後押しするかのように、白千鳥の副隊長のソーニャが続けた。

全戦力を投入したスカーレットフェザーの突撃力は闇の血盟軍にとって想定外のものであった。
前衛のオーク部隊を白狼のサリッサ部隊が貫き、強力な支援魔法を盾に突撃してくる重装歩兵、さらに両脇を騎鳥銃騎士隊による包囲殲滅を受け、次々に突破されていったのである。

しかしそれ故にスカーレットフェザーの死傷者も増え、恐れを知らぬ突撃を繰り返した為に、スカーレットフェザーは孤立しつつあった。勢いだけで乗り切れるほど戦場は甘くはない。
如何に新式ライフル銃を備え、寡兵をそろえようと、指し手を違えば容易く崩壊する。

指揮官はその些事加減を見極めねばならない。
引くか、攻めるか。

しかして、ヴァレリアは特に悩んだそぶりもみせず、全軍に転進を命じた。

「進路、カルゴナルゴ城砦。急ぐわよ、間に合わないかもしれない。」

ヴァレリアの号令一閃、デュヴァリエ本隊は進路をカルゴナルゴ城砦へ向けた。
敵の波状攻撃を幾度も蹴散らした重装歩兵達がまるで一つの生物のように統一された動きでそれに続く。連合軍兵士たちは白千鳥騎士隊の転移魔法によって戦線を離脱していった。

カルゴナルゴ城砦の危機はしばらく前から幕僚総本部からのリンクシェルを通じて前線の指揮官クラスには伝えられていた。
対魔装備を施したヤグード教団軍の強襲を受け、聖都防衛の要であったカルゴナルゴ城砦はまさに陥落せんとしていたのである。

「主様、王国軍本隊から伝令です。」

いつのまにかヴァレリアの背後にいた朔夜が戦忍着の懐から書状を取り出してヴァレリアに渡す。
ヴァレリアがその封を切るころにはすでに朔夜は風の中に消えていた。
チョコボを走らせながら内容を確認するヴァレリアにサイフォスが聞く。

「本隊は何と?」

「ガルレージュ要塞への戦地移動命令よ。でもこれは受け入れられない、王国騎士団の命令でもね。」


「そこまでしてウィンダスを助けると?」

「今、ウィンダスは存亡の危機にある。しかしそれは私たち王国国民にはおよそ預かり知らぬこと。でも私たちは軍人で、騎士だ。サンドリア王国軍の。騎士は騎士道を尊ばなければならない。」

ヴァレリアの遠くを見据える視線の先には赤々と燃える空があった。

王国軍人。騎士であること。
サイフォスはデュヴァリエが尚武の名門たる所以を見た気がした。

「騎士道とかいうと、多くの人は顔をしかめるわ。堅苦しい事をいう、古臭い人間だと。それは仕方のないことだ。だけれど、だからこそ私たちデュヴァリエは騎士道を貫く必要があるの。サンドリアの騎士っていうのはね、まずなにより強くなければならない。そして誰よりも気高くなければならない。その名誉と誇りで、民を守るために。後世、サンドリアがウィンダスと手を取り合い、友人になるために。」

気がつけばヴァレリアの周りに侍っていた者たちのほとんどが右胸に拳を当てていた。

「聞いたか、野郎ども!デュヴァリエは見捨てない。デュヴァリエは裏切らない。俺たちは緋色の翼なンだ。走れ、走れ、飛ぶが如く!」

ハーディンが野太い声で大斧を掲げた。幕下の重装歩兵たちもそれに続く。

ヴァレリアのフェルディナントはカルゴナルゴ城砦へと向けられた。
緋色の騎兵隊は再び尋常ならざる速度で走り出す。

口元にうっすらと微笑をうかべたヤチルルが印を結んだ。
新緑色の渦が空間に現れる。 林檎園の匂いをかぐわせて・・・。


***


サンドリアの古老は語る。
タブナジアこそ、サンドリアの最大の友好国にして頼るべき友人であった、と。

タブナジアは「ザフムルグの真珠」と謳われ、美しい景観、そのザフムルグ海からもたらされる海の幸を用いての貿易など、国家を取り巻く環境は安寧を極めていて、その都が誇るタブナジア騎士団こそ、まさに海洋王国として最強と謳われた騎士団であった。

狼王ルジーグの時代、第二次コンシュタット会戦においてはルジーグ王、ひいてはサンドリア王国の為に、従軍していたタブナジア騎士500余名が壮絶な討ち死にを敢行したと言われている。

サンドリア王国軍にとって、タブナジア騎士団ほど信頼に足る友軍は他に存在しなかった。

***


「タブナジアは、グリフィンの盾たれ・・・か・・・。」

女は右肩に手をやる。血なまぐさい鉄の匂いが強くなった。
ヤグード僧兵に切りつけられた傷口からじわじわと血が滲んでいる様だ。
足元に転がるは、美しき装飾のほどこされたバローネプレートアーマーを身にまとい、槍を握り締めたまま力尽きた騎士たちの亡骸。

楼閣の瓦礫の一塊に背を持たれ、空を仰ぐ。

ふとガルレージュ要塞への援軍にと、はるばるタブナジア本国から派遣された頃を思い出した。
勇壮な王国騎士団と槍を並べて戦える喜び。それはタブナジアに生まれた者にとって至上のことであった。だからこそ、カルゴナルゴ城砦の悲報をきき、我がタブナジア騎士の一団が誰よりも早く援軍を申し出たのだ。

「内地の戦が、こんなにも苛烈だったなんて。ちょっと・・・想定外。」

女は自重しつつ笑った。
内地とはサンドリア王国のあるクォン大陸のことを指す。
タブナジアの人々はサンドリア王国のあるこの大陸のことを親しみをこめてそう言うのだ。

壁に背をもたれながら目を瞑る。
自分の腕で自分を抱いた。

「寒い・・・。」

つめたい風のせいだけではない。どす黒く染まった右肩の傷から予想以上に出血しているのである。
薄れていく意識。朦朧とした意識のなかで、女は両手に握り締めたままの槍のことを想って唇の端をあげた。槍を握り締めている手のひらだけが滾る様に熱い。
今まさに死のうというしているのに、自分はまだ戦おうとしていたのだから。

瞼を閉じる。

カルゴナルゴ城砦の前哨基地にたどり着いた頃、襲来してきたヤグードの一団は異様であった。
ヤグード僧兵の怪しげな出で立ちはミンダルシアに渡って来てからというもの、そう見慣れぬものではなかったが、その一団は一様に白い羽をまとった集団であったのである。

それが対魔防備をほどこし、薬に酔って痛みを忘れた死人の集団であることに気づいたのは、カルゴナルゴの前哨基地の門から飛来したタルタル魔戦士の魔法がはじき返されたときであった。

浮き足立つ魔戦隊を前に、彼女の部隊はすぐさまチョコボを降り、それをタルタルの魔戦士たちに譲ると、小竜を従えて迫るヤグードの部隊へと駆けていった。
ヤグード僧兵の刀を弾き返しながら、後方へと遁走していくタルタルたちの姿を眺めて、タブナジアの騎士達は「これでいいのだ」という頷きあう。
あとは彼らがカルゴナルゴ城砦へと到達してくれれば、自分達の名誉は守られる。
一人、また一人と討ち取られる中、タブナジアの騎士達は一様に戦さ人となって雄叫びを上げた。

幾度斬り結んだか。
愛槍を突き、払い、振り回す。
腰に差していた細剣を逆手にかざして敵に突き立てた。

瀕死のともがらの手を握り締め、子竜が息絶えようと。
ただ、タブナジア騎士の名誉の為。

ヤグード教団の戦士達は、現人神ヅェー・シシュの教えの下、死を恐れぬ死人の集団である。
高い知能を備えた彼らの戦闘力は計り知れず、しかもオークやクゥダフと違いきわめて敏捷だ。
そして厄介な事に彼らは死を全く恐れない。

対魔装備のヤグード兵を4人までを細剣で突いて倒した。だが最後の一人を突き殺したところで、憤怒の形相で剣をつかまれ、そして奪われた。
そこから愛槍を振りかざし、しもべの子竜と共に6人倒した事まで覚えている。
疲労して体勢を崩したとき、背後に鈍い衝撃を感じた。
咄嗟に身を捻って致命傷を避けたものの、チェーンプレートの下衣を切裂いた白刃は肩に深々と突き刺さった。
強烈な痛みが全身を駆け抜け、そこで意識が途切れた。
そのあとの事は覚えていない。
気づいた時には楼閣の残骸に背をもたれ、その影に身を寄せていたのである。

確実に今際の時は近づいてきている。
死の足音が聞こえるような気がした。

しかし女はそれでも小さく微笑んでいた。
朧げな記憶の中で、輝く飛沫のように流れていく記憶が彼女を死の恐怖から救っていた。

タブナジア騎士団のいっそ殺してくれと思えた軍事調練。騎士を目指したのはいつだったか。まだ騎士ですらない、ただの少女であった時の思い出。懐かしい祖国、故郷の匂い。
その記憶の中に・・・彼女の辿った人生の轍の中に、とんがり耳のミスラの姿をみつけた。

鍋の蓋の盾をかざし、パンこね棒の剣をひらめかせ、緋色のマントを首に巻いた小さな騎士団長殿。
嫌だというのに、珍しい銀の髪だというだけで自分の手をとって無理やり連れ出されて・・・。
菓子の包み紙と軍鳥の抜け羽で作った勲章を渡されて、挙句は家来扱い。

「・・・・ル!」

名前は何だったか、思い出せない。
明日も遊ぶから!といったっきり、タブナジア港の桟橋で別れたきり、迎えにこなかったあの馬鹿。

「・・・テル!」

ずっと待ってたのに、昼から日が沈むまで待たされて。
次の日も、そのまた次の日も。来やしない。

「・・・ステル!」

結局、あの馬鹿に連れまわされた非日常が、日常に塗りつぶされていって。あぁ、その頃に私は騎士になろうと想ったのだ。あの馬鹿ミスラと一緒にやった騎士団ごっこがどうしようもなく楽しかったから。

「・・・エステル!!」

そうだ。思い出した。あの馬鹿ミスラの名前。

「ソーニャ! エステルにレイズ!はやく! まだ、まだよ!エステル・・・あんた、ここで死んだら殺すからね! 」

輪郭がうっすらと見えてきた。とんがり耳。
柔らかなレイズの光がエステルを包み、強く輝いた。


「・・・遅いわよ、ヴァレリア。何年、待たせるの・・・」

そうだ、ヴァレリアだ。私がタブナジア騎士になる、もっともっと昔の主君の名前。

エステルは微笑むと、強烈に襲ってきた睡魔の渦に飲まれていった。

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