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  • 2010.06.17 Thursday
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せめて冒険者らしく

 

正直、ここまで長く妄想が発展するとは思わなかっt


今回の見どころはアノヒトたちの参加かにゃー。

じょにー団とサーラメーヤ戦 その・・・よん?

 

***


 コトカに手をひかれてヴァレリアが帰ってくる。彼女の尻尾はしなやかに揺れている。落ち着きを取り戻している証拠だ。ぴょこぴょこと手を振ってみせるコトカと、何故だか気恥ずかしそうにしているヴァレリアの様子をみて、ダイハードは二人には見えないように小さく笑みを漏らした。

 ヴァレリアが調子を狂わせたことは、彼女を背負いながら露天酒場にもどってくる途中にすぐにわかった。いつものノリで乗り切れなかった上、自分が倒れた為にパーティが撤退したと思ったからだろう。

 彼女は地方貴族の娘で、歴戦の傭兵たちを率いて水晶大戦を戦ってきたと聞いた。騎士としての重圧を感じながら、いち騎士団の長として戦争を駆けていたのだろう。おかげで、職業軍人としての実力は上がっても、精神的に冒険者としては弱くなっていったのだ。

 これを乗り越えなければ本物にはなれない。

 最後は自分で乗り越えるしかないとはいえ、先輩冒険者としてせめて手助けはしてやろうと思った。そこで励ます為に彼女のあとを追おうとしていたのだが、コトカに先を越されてしまった。
コトカはヴァレリアが動揺し始めていると気づいたのだろうか。マトンのローストとナヴァランにむしゃぶりつくジョニーにうんざりしながら、スィーツの山盛りセットを注文している小さなタルタルを見つめて頼もしく感じていた。

「よぉよぉよぉよぉ、諸君。待たせたのぉ!」

 まだ人のまばらな露天酒場に、満面の笑みを浮かべて手を振りながらやってきたのは、キノコのような形の帽子を被った屈強なガルカだった。

 入り口から一行の姿を見つけた途端にそれをやるものだから、店内にいた他の冒険者達は何が起こったのかと、いっせいにそちらを見やる。ヴァレリアは少し恥ずかしかった。見ればモーターワークスとバリズは完全に他人の振りを決め込んでいる。博愛主義のエステルでさえどうしたものかと微妙な顔をしていた。

「やー、幼女誘拐犯のシムさんじゃないですか。待ってたよー」

 なんてことを言ってくれるのか、ヴァレリアは声の主であるジョニーを凝視した。モーターワークスとバリズは自分達の分の飲み物が入ったコップをもってこっそりと別の席へと移動していた。

「お、俺は無実じゃ!無実なんじゃあぁああああ!」

 悲痛な叫び声を上げたシムは、その大きな体を精一杯小さくしてオイオィと泣き始める。その様がおかしくって仕方ないというように、ジョニーはケラケラと笑う。

「もうっ。ジョニーさん、あんまり彼をいじめないでくれよ。ほんと、大変だったんだから。」

 気づけば、小さなタルタルが気の毒そうな表情を浮かべてシムの傍に立っていた。ボサボサの髪に、ぴんっとアンテナのように一本、クセ毛が立っている。

「ラッチさんもわざわざありがとう。きゃー。今日も素敵だわー可愛いわー。」

 ジョニーの横にいたコトカがぴょんと跳ねるようにラッチに抱きつく。あまりの勢いに尻餅をつきながらラッチは恥ずかしそうに微笑んだ。ピンとはねたクセ毛がゆらりゆらりと揺れる。

「二人とも、よく来てくれたわぁ。姫、嬉しいっ」

 他人の振りを決め込んでいるクールガイ二人のかわりに、ダイハードがにこやかに歓迎の意を示した。

「構わん構わん。ラッチのおかげで無罪も証明されたことだし、堅苦しいのは抜きじゃ」

 さっきまでめそめそ泣いていたのが嘘の様に、かっかっかと鷹揚に笑う。何でも、これほど気安く、威厳とは遠い振る舞いをしていながら、このガルカのじいさんとタルタルの青年は冒険者達の中でもかなりの実力者であるらしい。シムの若い頃はその朗々たるバリトンボイスで一世を風靡し、その片手間で見につけた格闘術で並み居るモンスターを片っ端からぶちのめしていった。ラッチはというと、各地を転々として古の遺跡を調査しながら、古代人達の糸織技術を現代に伝え、大きな財を築き上げた。

 二人とも成功者であり、そして一流の冒険者であった。
 
 ただ、そう聞いてはいても実際の二人はというと、とぼけたガルカのじいさんと頼りなさげなタルタル男性にしかみえないし、冒険に出る前においてはいつもそんな感じだった。

「サーラメーヤにはこっぴどくやられたらしいですね。皆さん?」

 それもまた経験ですよ、とラッチは笑う。

「確かに、いい経験になったよ。まぁ、次は勝つんで。うちのナイト様も次は大丈夫でしょ。」

 ジョニーがちらりとヴァレリアのほうに視線を移す。小さくVサインを立ててみせるヴァレリアにシムじいさんは人のよさそうな笑顔を向けた。

「ほ、こりゃ勇ましいのう」

 エステルが二人分の飲み物をもって机に並べ、席を勧めた。二人とも小さく頷き、席に座ると一口ずつグラスの中身を喉に流し込んだ。

「勇ましいといえればいいのですが。このままでは唯の無駄な行いになりかねないんですよね。ヴァレリアが倒れなかったとしても、多分時間の問題だったような気がしますし。」

「ほうほう、あの愉快なジョニー団がそこまで遅れをとったか。」

「買いかぶりすぎですよ。私たちは世界のおいしいものを探しているだけですから。」

「「「いや、それはない」」」

 ジョニーの言葉に全員から抗議の声が上がる。なんともいえない間が数秒流れた後、クスクスと笑いあった。こんな時の息の合いっぷりは金メダル級といってもいい。ジョニーがふふっと笑った。

「サーラメーヤは怒ると炎を自由に操ると聞いたことがあります。」

「そこなんですよ。」

 ラッチがなんとなしに呟いた言葉に、ジョニーが人差し指を立てて言った。

「その、『怒ると』ってところです。ヴァレリアがゲーツオブハデスを食らう前。サーラメーヤは大きく吼えたんですよ。」

 モーターワークスが腕組みをしながら首をかしげた。

「いや、でも一番近くで戦っていた俺達にはそんな声聞こえなかったぞ。あれだけでかい奴だ、吼えればすぐわかるだろ。しかも首は3本もあるんだぜ。」

「私の推測が間違っていなければね。サーラメーヤは静かに怒りを溜め込むタイプなんだよ。あの3つの首の、一つが低く呻ってたのを見たんですよね。」

「あ・・・。」

 ヴァレリアは思わず声を出していた。そういえば、怒りの感情の表現の仕方は様々だ。我を忘れて暴れだすタイプもあれば、静かに・・・決壊するダムのようにその瞬間まで怒りを溜めておくタイプもいる。

 フラッシュで視覚を麻痺させたとき、そして実際に怒らせたとき、3つの首が激しく暴れまわった様子を思い出す。確かにあれほど激しく暴れているモンスターを前にすれば、モンスターの見せる感情の変化にまで気がつくはずがない。3つの首のうちの一つが、別々の感情を抱いているなどわかるわけがない。前衛だったヴァレリアたちには気づけなかったことを、ジョニーは冷静に観察していく中で気づいていたのだ。

「まぁ、あくまで私の推測なんですけど。可能性としては高いと思う。ゼオルム火山まで行くんだ、対策を思いついた度に試しにいってたらきりがないしね。どうにかして出発する前に確実性を高めておきたいんですよ。ラッチさんたちはそこんとこ、どう思います?」

 ジョニーが水を向けると、ラッチは頭のアンテナのようなクセ毛をもてあそんだままじっと目を閉じて、しばらく考え込んでいた。

「うーん・・・。よく考えましたねぇ。」

 散々考え込んだ末に出てきたのはその一言だった。しかし表情は明るい。

「現場で実際に使えない知識はただの雑学に過ぎません。それはシチューの作り方から軍学の真髄にまで通じます。私はジョニーさんの推測を信じますよ。」

「そうじゃのう。一瞬の閃きは万年の座学に勝るんじゃ。」

 シムじいさんはかっかっかと笑いながら立ち上がる。豊富な経験があるからこそ出来るやりとりだろう。バリズがカウンターへと向かう。全員分の支払いを、誰にいわれたわけでもないのに払ってゆく。
それを合図にジョニーがひらひらと手を振った。

「どんなに恐ろしい攻撃でも、使ってくるタイミングさえわかればどうにでもなるってことね。」

「まぁまだ100%勝てるってわけでもないがな。」

「もう!せっかく一気に希望がわいてきたって時なのに、バリさんったら。ほらほら、行きますよ。」

 エステルがぼやきを呟くバリズの背中を押して出てゆく。モーターワークスはそのやりとりを見送りながら、移送の幻灯の使用許可を貰いに皇国軍へと向かった。

***
 
 その日は丸一日をかけ、たっぷりと準備と休息のための時間を割いた。少しでも討伐の成功率を上げる為にバリズとラッチは皇国の図書館へサーラメーヤの文献を探しに行き、ダイハードとモーターワークス、エステルの3人はより良い武器を求めて競売所やなじみの武器屋を訪ねた。ヴァレリアは大事をとるために泥のように眠り、シムじいさんはジョニーとコトカにアトルガンの端から端まで、食べ歩きに連れ回された。

 そうして太陽が高く上る正午をすぎ、やがて日が暮れかかる頃、未だに眠りこけているヴァレリアをエステルが引きずるようにして移送の幻灯へと連れて行く。遥か東にあるゼオルム火山へと向かう為に。

 ベースキャンプに荷物を運び込み、すぐには使わない道具を洞穴の脇にあるハンモックへとしまい込む。ここまでは先日と全く同じ。ここからの展開をどう変えていくかが大切なのだ。
 
 一度は一方的に翻弄されただけあって、体は自然に緊張する。洞穴から出るとむせ返るような熱気がまとわりついてきた。過酷な環境である。こんなところで何の対策もなしに歩き回ったら、サーラメーヤと出会う前に力尽きてしまう。

「ほぅら、氷のクリスタルを染み込ませておいたわよぉ。皆、ちゃんと身に着けとくのよぉ」

 ダイハードが氷のクリスタルを拳で粉砕し、それをまぶした布を配ってゆく。これがないとゼオルム火山のような極端に過酷なフィールドではすぐに動けなくなってしまうのだ。以前と違い、今度はラッチとシムがいる。それだけでもなんとなしに勝てる気がしてしまうから、二人の参戦は心強い。

「あぁ・・・カード忘れた・・・。」

 鞄をもぞもぞと漁っていたジョニーが呟いた。大きく胸元が開いたジャケットを身に纏い、腰には銀色に輝く銃がぶら下がっている。
 準備をするにあたって、ジョブも変えていた。吟遊詩人のシムが参戦した事により、ジョニーはコルセアになっていた。冒険者はその状況によってジョブを変える事が普通らしい。ヴァレリアは物珍しげにジョニーを眺めていた。揺れるバストとほっそりとした腰がなんとも艶っぽい。

「まぁいっか、ライトカードとダークカードはあるし。・・・ん、何?」

 バリズとラッチが自分をじっと見つめている事に、ジョニーは不思議そうに訪ねた。いや、別に何も。といいながら自分の装備を整え始める二人に、エステルが自分の胸を押さえてなにやら複雑な表情を浮かべていた。

「ほれ、皆の衆。メシ、出来たぞ。ばっちりがっちり食って、今度は勝つぞー」

 鍋の蓋とおたまをカンカンと鳴らしながらモーターワークスが一同を呼び集めた。
腹ごしらえが終われば、再びサーラメーヤと戦うのである。旺盛な食欲でむしゃぶりつくジョニーを眺めながら、エステルはやはり複雑な表情を浮かべていた。

「ジョニーさん・・・ずるい・・・。」

 誰にも聞こえないように、エステルはぼそりと呟いた。

***

 サーラメーヤは以前戦った場所よりもさらに火山の奥へと移動していた。
山中の洞窟を通って上っていくと、突然外へ出る。溶岩が冷えてできた地面。いまだに高熱を発する溶岩の小川が岩場を動脈のように流れている。小さな洞窟を抜けては空の見える場所に出てきて、それを幾度も繰り返す。

 何度目の広場に出たか。見上げればゼオルム活火山の山頂がすぐそこに見えた。いつのまにか麓から山頂付近まで移動してきていたのだ。地下での活発な活動を物語るように、山頂の火口からは盛んにケムリが吐き出されている。灰色のケムリが厚い雲のように頭上に垂れ込めた。
 
 ハルブーン監視塔から眺めていた時は晴れていた空が、今は噴煙によってすっかり覆いつくされていた。

 そんな広大な岩場に、サーラメーヤはいた。三つの首が低い呻り声をあげながらそれぞれ違う方向を向いている。

「うわぁ・・・大きいですね・・・。よくあんなのを相手に私達抜きで挑んだもんです。」

 物陰から様子を伺っているヴァレリアの脇の下から、ひょっこりと顔をのぞかせてラッチが囁いた。自分がいればなんとかなると言外に匂わせているようだ。

 サーラメーヤはまだこちらに気づいていない。大きく曲がりくねる溶岩から立ち上る陽炎が岩場に潜むヴァレリアたちの姿を隠してくれていた。距離もかなりの距離離れている。

「バリズさん、それじゃあ・・・いきましょうか。」

「わかった。タイミングは任せる。」

 黒魔導師のバリズが静かに古代魔法IIの詠唱に入る。それを確認してラッチは目を瞑った。見る見る彼らのまわりに小石や砂が舞い上がり始めた。魔力の渦が空気を震わせているのだ。その間に、コトカを抱きかかえたダイハードと、前衛たちが武器を抜いて走り出す。エステルだけが音も無く跳躍した。

 サーラメーヤの前に横たわる溶岩の小川。

 ヴァレリアたちの身に着ける防具は職人たちが精魂込めて作った防具や魔力を込められた装備だ。しかしそれをもってしても、流石に溶岩の中を走れるほど万能ではない。サーラメーヤに肉薄するにはこの溶岩の小川を大きく迂回する必要があった。

 溶岩の量が少なくなり、飛び越えられる程度の幅になったところで、大きく跳躍して川を渡る。丁度いい具合に、そこまで走っているうちにサーラメーヤの背後をとれる形になった。

「気をつけるのよぉ、乾いてるように見えて、いきなり高熱のガスが噴出してくることもあるんだからぁ」

 ダイハードの忠告に、全員大きく頷き、そして足を速めた。

「ヤァアアアアアァァァァ!」

 裂帛の気合と共に、スーパージャンプで空高くに飛んでいたエステルが和風の両手槍、巴を握り締めて突き立てる。狙ったのは右肩。溶岩を迂回している前衛たちから目を逸らさせるのが目的なので、無理に懐深くに斬り込む必要はない。だったら、肩の筋肉にでも槍を突き立てて、攻撃を受け止めるヴァレリアの負担を少しでも減らしてやろうと考えたのだ。

 槍を引き抜き、なぎ払い、叩きつけ、アクロバティックな跳躍を見せて再び空へと舞う。そこまでしても、サーラメーヤはまだ身構えていなかった。いきなり空中から現れた襲撃者に、まだ準備が出来ていない。

 それに気づいたエステルは地面に着地するとその場にとどまってさらに槍を突いた。渾身の力を込めて槍を突き刺し、そのまま切り上げ、さらに引き抜いた槍を勢いよく振り回すように叩きつける。その全てに全身の力を込めて槍を振るった。

「はあああぁぁぁぁっ!」

 溶岩を迂回している誰よりもはやく、モーターワークスがサーラメーヤにとりついた。手にした破軍が鈍い光を閃かせてサーラメーヤの漆黒の鱗を切り裂いた。地面に踏ん張る足の力、鞘から抜き放たれた刀身の勢いが鋭く鱗を裂く。太刀を振り回す腕の力と歴戦の経験を、その刀身にのせて叩きつける。やがてモーターワークスが刀で切りつける度に、夜烏の羽のようなものが舞い始めた。

 乱鴉とよばれる、一流の剣士だけが使える刀術の奥義だった。

 そこからわずかに太刀を退いて、今度は地面を削るような下段から鋭い切り上げへと繋げる。

 その刹那、舞い散るような漆黒の羽がみるみる弾け飛び、全ての光を拒絶するかのような闇の爆発が巻き起こった。

「いっけぇぇぇええええ!!」

 その闇にひきよせられるように、絶対零度の氷の嵐が吹きすさんだ。バリズとラッチの放ったフリーズIIが灼熱の溶岩をめくり上げながら津波のようにサーラメーヤに襲い掛かる。凄まじい冷気がたちまち溶岩を氷点下の世界へと誘い、そして美しい光を瞬かせて消えた。

「硬い!」

 フリーズIIの着弾の瞬間、転がり込むようにその場から離れたモーターワークスが叫んだ。サーラメーヤの肩を起点に、前脚を重点的に攻撃を加えていたエステルの考えを読み、彼女が反撃をうけないように逆の足を攻撃していた。

「それなら、姫の出番ねぇ!」

 モーターワークスに怒気を隠そうとせずにらみつけたサーラメーヤの首を、巨大な鉄塊で殴りつける。鮮やかな宝飾を施されていたそれは、斧というよりは鉄板、鉄板というよりは鉄塊だった。宝飾の施されたゴージャスな鉄塊、マーシャルブージを力の限りぶん回したダイハードがニカっと笑う。

 たったあれだけの動きで、自分の意図を読み取り、その考えにきっちりあわせてくれる。安心して動ける。エステルはそう頷くと、さらに高く跳んだ。

 もう完全にこちらの存在を認め、身構えるサーラメーヤ。三つの首を荒々しく動かし、跳躍したエステルを睨み付ける。

「おっと、やらせないよ!」

 その首の一つをクイックシルバーから撃ち出された弾丸が貫く。着弾と同時に氷の輝きが弾ける。コルセア、ジョニーの撃ち出すアイスショットだった。残った二つの首には間髪いれずバリズとラッチのサンダー犬降り注いだ。
 
 魔弾と魔法に焼かれたサーラメーヤの首の動きがわずかに鈍った。

 自分を食い千切ろうとする首をかわし、自重と落下速度の乗せた巴の一撃を首の付け根に突き立てる。空を噛んだ首がガチンガチンとエステルの後ろで音を立てて響いた。

 地面を踏みしめるサーラメーヤの前脚に、ダイハードの渾身の一撃が振り下ろされる。一撃目で爪にひびが入り、そこを目掛けてモーターワークスが破軍を突きをいれ、乱鴉、月光へと繋げた。その時、攻城兵器のようなサーラメーヤの巨大な爪が凄まじい音を立て砕け散った。

 砕けた爪の先が風切り音を上げながら弾けとび、乾いて硬くなったゼオルム火山の地面に深々と突き立つ。散々恐怖を振りまいてくれた前脚の爪の一部をようやくへし折ることができた。これであの凶悪な前脚の一撃は少しは弱まるだろう。

グルォォオオオオオオオオオオオ!

 耳を劈く鳴き声をあげて、瞬時に怒りを沸騰させたように3つの首が一行を睨み付ける。ずらりと並ぶ鋭い牙の間からはぼたぼたと唾があふれ、二つの首がせわしなく動き出した。そのうちの真ん中の首だけが低い呻り声を上げて、高く天を仰いでいる。

「ヴァレリア!」

 ちょうどそこでヴァレリアが駆けつけてきた。ジョニーが叫ぶとヴァレリアは目を閉じて盾をかざす。

「来るよ、皆! 爆風に巻き込まれないように、ヴァレリアの後ろから出ないで!」

 そう叫びながらジョニーはファントムロールを振った。二つのダイスが踊るように転がる。くるくると回っていたダイスがとまり、出た出目は6と5だった。出目を出した瞬間、二つのダイスは粒子状の光に姿をかえ、ほのかな光を放ちながらヴァレリアを包み込んでゆく。ジョニーが発動させたのは自分と、仲間たちに明確な敵意をもって放たれた攻撃魔法から身を守る、メガスズロールだ。

「さすが私。狙い通り!」

 小さくガッツポーズを取りながら、ジョニーは唇の端を上げた。人の身である限り、多少の個人差はあってもモンスターからみれば極端な違いなどないだろう。では何が人間たちの優劣を分けるか。それは最後の最後まで逆転を伺う心なのだとジョニーは思っていた。
装備に工夫をし、持ち込む道具に考えをめぐらせ、そして現場ではもっとも効率よく動くことを心がける。
 
 それが出来る者が、優秀な冒険者なのだ。

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